動物の謝肉祭という曲をご存じでしょうか?
名前だけは聞いたことがおありだったり、「白鳥」といった、一部の曲をご存じの方、曲名はわからないけど聞いたことある、といった方も多いのではないでしょうか。
この曲、どうやら掘り下げてみると他にも面白い曲や、エピソードが色々とあるようです。
組曲から何曲か抜粋したものをアレンジ楽譜で演奏したことがあるのですが、曲そのものもユーモラスで楽しい感じでしたので、エピソードを知った上で演奏を聴くとより楽しめるのではないかなと思います。
動物の謝肉祭にまつわるエピソードや、組曲を構成しているそれぞれの曲について解説してみました!
動物の謝肉祭はフランスの作曲家サン=サーンスが作曲した組曲
動物の謝肉祭は、フランスの作曲家であるサン=サーンスが作曲した組曲です。
『動物学的大幻想曲』という副題がついており、14の曲で構成されています。
元々はプライベートの夜会で演奏するために作曲されたもので、他の作曲家の楽曲をパロディーにして風刺的に使っていることもあり、サン=サーンスが自分の死後まで出版・演奏を禁じたというエピソードがあります。
プライベートの夜会で演奏するために作曲されたということは、ごく内輪でワイワイ楽しむために作曲されたものなのかなと思います。
副題の『動物学的大幻想曲』というのも無駄に壮大で、何がどう動物学的なの!?と突っ込みどころ満載なところも面白いです。
気心の知れた仲間内だからこそ通じるギャグやネタってあるよね、というのは今の時代でも同じかなと思いますが、サン=サーンスはそれが自分の生きているうちに世界中に広まってしまうことを恐れたのかなと思います。
確かに内輪受け狙いで作ったものが思いの外広まってしまうのは恥ずかしいですし、パロディー元の作曲家から怒られたりしたくないですものね……。
白鳥や水族館、象、ライオン、化石!?動物の謝肉祭の各曲を解説
動物の謝肉祭は14の曲で構成されていますが、それぞれの曲について解説していきたいと思います。
第1曲「序奏と堂々たるライオンの行進」
耳をつんざくようなトレモロ(音を高速で小刻みに演奏する奏法・アナログの目覚まし時計の音が近いかも?)で曲が始まります。
「何が始まるんだろう!?」というワクワク感のある序奏ののち、堂々とした行進のメロディーが奏でられます。
百獣の王であるライオンが風格を漂わせながらゆっくりと歩く姿が想像できるようです。
第2曲「雌鶏と雄鶏(めんどりとおんどり)」
前のフレーズを繰り返したり、ちょっと変えてみたりしながら曲が進んでいきます。
2羽の鶏がお互いの鳴き声を模倣しあっているかのような曲です。
第3曲「騾馬(らば)」
らばって馬とロバを掛け合わせた動物だったと思うのですが、この曲のモチーフになったのはアジアロバであろうと言われています。
ひたすら音が上り下りしながら進む曲です。
らばってこんなに軽やかに動く印象なかったのですが……物事のとらえ方は色々ありますね。
第4曲「亀」
のそのそとオッフェンバックの『天国と地獄』の旋律がわざとゆっくり演奏される曲です。
『天国と地獄』といえば、運動会のかけっこやリレーの時に流れているイメージのある爽快感のある曲ですが、テンポが変わると亀にもなるんですね。
第5曲「象」
低音で、もそもそと軽やかにワルツ(3拍子の踊りの曲)が奏でられます。
ワルツはオリジナルではなく、ベルリオーズの『ファウストの劫罰』から「妖精のワルツ」、メンデルスゾーンの『夏の夜の夢』から「スケルツォ」が組み入れられています。
象ってワルツ踊れるのか……?
第6曲「カンガルー」
装飾音が付いた和音が上下して、飛び回るカンガルーを描写している曲です。
カンガルーのすばしっこさとジャンプの軽やかさがよく表れていると思います。
第7曲「水族館」
幻想的なメロディーに、キラキラとした水面の輝きを表すような伴奏が添えられた曲です。
水族館のほの暗さ、ゆったりと魚が泳ぎ、水がキラキラしている情景が浮かぶようです。
第8曲「耳の長い登場人物」
馬のいななきを模倣したような音が印象的な曲です。
耳の長い登場人物とはいったい誰なのか、動物なのか……サン=サーンスの音楽に嫌味な評価を下していた音楽評論家への皮肉を込めた曲だとも言われています。
第9曲「森の奥のカッコウ」
厳かな雰囲気の中、カッコウの鳴き声が聞こえてきます。
この曲ではサン=サーンス自身が作曲したピアノ協奏曲第2番第3楽章の一部和声進行がそのまま引用されています。
曲の進行にとらわれずカッコウは鳴く、ということなんでしょうか。
第10曲「大きな鳥籠」
小鳥が軽やかに飛び回る様子が目に浮かぶようです。
鳥籠とのことなので、この小鳥は狭いところに閉じ込められているのでしょうか……?
第11曲「ピアニスト」
ピアノの練習曲、それも音階を単純に繰り返すだけの指使い訓練に近いもので、なんとこの曲「わざとへたくそに」という演奏指示があります。
最後は明確な区切りもなく、そのまま次の曲に突入します。
第12曲「化石」
サン=サーンス自身が作曲した『死の舞踏』の「骸骨の踊り」の旋律、ロッシーニの『セビリアの理髪師』から「ロジーナのアリア」、その他にも「大事なタバコ」、「きらきら星」、「月の光に」、「シリアへ旅立ちながら」などのフランス民謡が組み合わされている曲です。
コロコロと固いものが転がるような曲調は化石っぽいと言えなくもないのですが、うーん、なぜ化石なのか……?
第13曲「白鳥」
全14曲中最も有名な曲で、チェロの独奏曲としても有名です。
サン=サーンスの完全オリジナル曲でもあることから、生前の公開演奏と楽譜出版が許された唯一の曲でもあります。
白鳥が優雅に水面を泳ぐ姿が目に浮かびます。
第14曲「終曲」
カーテンコールですね。
軽快なメロディーに乗って、これまでの各曲のメロディーが登場します。
なぜその動物を取り上げた!?と思うようなものや、到底動物ではない「ピアニスト」が取り上げられていたりとユーモアにあふれた曲ばかりだと思います。
演奏と一緒にそれぞれの動物が出てきて、終曲でみんな出てきてわちゃわちゃする、なんて舞台があったら見てみたいなと思いました。
動物の謝肉祭の演奏に使用する楽器を解説
動物の謝肉祭は、元々プライベートの夜会で演奏されるために作曲された曲ということもあり、演奏に使用する楽器は少な目で以下のようになっています。
フルート(ピッコロ持ち替え)
クラリネット
グラスハーモニカ(稀少な楽器であり、チェレスタやグロッケンで代用されることが多いようです)
シロフォン(いわゆるもっきん)
ピアノ 2
ヴァイオリン 2
ヴィオラ
チェロ
コントラバス
フルオーケストラと比べるとなかなか特殊な編成かなとは思います。
個人的にはピアノが2台というのに演奏上のハードルを感じますが、その分他の楽器が少なくても音楽の土台というか、骨格が作りやすかったのではないかなと思います。
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