ベートーヴェンの第九をご存じでしょうか?
歓喜の歌と呼ばれる合唱部分が有名で、日本ではよく年末に演奏されているイメージがあります。
この記事ではベートーヴェンの第九、歓喜の歌とはどんな曲なのか、また歓喜の歌の歌詞についても解説しています。
私はベートーヴェンの第九を全曲聞いたことも演奏したこともあります。
有名な部分が出てくるまでがかなり長いので、聴いている側は「知ってるところ、まだかな~」という感じですが、演奏する側もそこまでがなかなか大変でして、歓喜の歌にたどり着いた時の解放感は半端ないです。
ベートーヴェンの第九は年末によく演奏される
ベートーヴェンの第九はその名の通りベートーヴェンが1824年に作曲した9番目の交響曲です。
「合唱付き」などの副題がついていることもありますが、これはベートーヴェン自身がつけたものではないようです。
第九は作曲されてから実に200年にもなる曲なのですが、今でも変わらず愛され、演奏され続けています。
まさに「名曲」と言えますね。
第九は日本で年末によく演奏されていますが、これは1940年ごろからのこととされています。
当時はオーケストラの演奏収入が少なかったため、楽団員が年を越せるようにと企画されたものが成功して広まったといわれています。
第九の演奏にはオーケストラだけではなく合唱も必要で、比較的大規模な編成になりますので、多くの楽団員が収入を得るのには最適ですね!
曲の題材として特に年末年始っぽいテーマを取り扱っているわけでもありませんが、年末に何度も聴いていると、第九の歓喜の歌を聴くと「今年もそろそろ終わりだな~」という気分になってきますね。
第九 歓喜の歌はこんな曲
ベートーヴェンの第九は4楽章からなる交響曲ですが、合唱が登場するのは最後の第4楽章だけです。
歓喜の歌は、ドイツの詩人であるシラーが書いた「歓喜に寄せて」という詩が元になっています。
ベートーヴェンは生涯にわたってシラーの詩集を愛読していたようで、この詩に感銘を受けて曲をつけようとしましたが、その着想から第九が完成するまでに実に22年かかっています。
以下に1803年改稿版の歌詞を紹介します。
An die Freude
O Freunde, nicht diese Töne!
Sondern laßt uns angenehmere
anstimmen und freudenvollere.
(以上3行はベートーヴェン自身による作詞)Freude, schöner Götterfunken,
Tochter aus Elysium
Wir betreten feuertrunken.
Himmlische, dein Heiligtum!Deine Zauber binden wieder,
Was die Mode streng geteilt;
Alle Menschen werden Brüder,Wem der große Wurf gelungen,
Eines Freundes Freund zu sein,
Wer ein holdes Weib errungen,
Mische seinen Jubel ein!Ja, wer auch nur eine Seele
Sein nennt auf dem Erdenrund!
Und wer’s nie gekonnt, der stehle
Weinend sich aus diesem Bund!Freude trinken alle Wesen
An den Brüsten der Natur;
Alle Guten, alle Bösen
Folgen ihrer Rosenspur.Küsse gab sie uns und Reben,
Einen Freund, geprüft im Tod;
Wollust ward dem Wurm gegeben,
und der Cherub steht vor Gott.Froh, wie seine Sonnen fliegen
Durch des Himmels prächt’gen Plan,
Laufet, Brüder, eure Bahn,
Freudig, wie ein Held zum Siegen.Seid umschlungen, Millionen!
Diesen Kuss der ganzen Welt!
Brüder, über’m Sternenzelt
Muß ein lieber Vater wohnen.Ihr stürzt nieder, Millionen?
Ahnest du den Schöpfer, Welt?
Such’ ihn über’m Sternenzelt!
Über Sternen muß er wohnen.
曲が完成するまでだいぶお手元で温められていたのですね……。
交響曲に声楽が効果的に使用されたのは第九が初めてとされています。
また、1時間を超える演奏時間やティンパニ以外の打楽器を取り入れたりなど、第九には当時の交響曲の常識をくつがえす要素がたくさん入っています。
ベートーヴェンもお気に入りの詩をどのように自身の作品に取り入れるかをきっと試行錯誤したのだと思います。
第九 歓喜の歌 歌詞はこんな意味
ドイツ語の歌詞をご紹介しましたが、ここから意味を取るのはなかなか難しいですよね……。
第九の歓喜の歌はどのような意味なのか、訳を以下にご紹介します。
「歓喜に寄せて」
おお友よ、このような音ではない!
我々はもっと心地よい
もっと歓喜に満ち溢れる歌を歌おうではないか
(上記3行はベートーヴェンによる作詞)歓喜よ、神々の麗しき霊感よ
天上の楽園の乙女よ
我々は火のように酔いしれて
崇高な汝(歓喜)の聖所に入る汝が魔力は再び結び合わせる
時流が強く切り離したものを
すべての人々は兄弟となるひとりの友の友となるという
大きな成功を勝ち取った者
心優しき妻を得た者は
彼の歓声に声を合わせよそうだ、地上にただ一人だけでも
心を分かち合う魂があると言える者も歓呼せよ
そしてそれがどうしてもできなかった者は
この輪から泣く泣く立ち去るがよいすべての被造物は
創造主の乳房から歓喜を飲み、
すべての善人とすべての悪人は
創造主の薔薇の踏み跡をたどる。口づけと葡萄酒と死の試練を受けた友を
創造主は我々に与えた
快楽は虫けらのような弱い人間にも与えられ
智天使ケルビムは神の御前に立つ天の星々がきらびやかな天空を
飛びゆくように、楽しげに
兄弟たちよ、自らの道を進め
英雄のように喜ばしく勝利を目指せ抱擁を受けよ、諸人(もろびと)よ!
この口づけを全世界に!
兄弟よ、この星空の上に
ひとりの父なる神が住んでおられるに違いない諸人よ、ひざまずいたか
世界よ、創造主を予感するか
星空の彼方に神を求めよ
星々の上に、神は必ず住みたもう
壮大な世界観の詩ですね……!
喜びに満ち溢れ、自分の定めた道を力強く進むことを後押ししてもらえるような勇気をもらえる内容だと思います。
今年を振り返り、希望に満ちた新年を迎えるのにもふさわしい内容の詩だと思いました。
楽団員の生活のためとはいえ、年末に第九を演奏しよう!という発想が素晴らしいですね~。
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